私には、年の離れた弟がいました。
私は毒親と社会人1年目の時に絶縁しましたが、同時にその弟も絶縁しました。
最初は弟とも仲が良く、年が離れていたので、毒親から守ってあげたい、大人になったら共に戦いたい、と強く思っていました。
でも、残念ながら絶縁してしまいました。
兄弟を大事にしようと思っていたのに、どうしてそんなことになってしまったのか、体験談をお話しします。
理由①:毒親による兄弟差別
毒親からは、姉弟差別をされて育ちました。
娘に厳しく、息子には甘いという毒母像はよく耳にしますが、うちももれなくそのパターンでした。
私の母親は、「女なんて知恵をつけなくていい」と言われて育ち、短大出がコンプレックスだったので、自分が得られなかった教養を娘につけさせようとしました。
私は、小さい頃から一日何時間もピアノの稽古と、中学受験の勉強をさせられ、少しでもサボれば叩かれ、歯向かうと殴られ、少しでも成績が悪いと罵倒され、ついでに容姿も罵られ、休む暇もなく、友達と遊ぶ時間も取れませんでした。
弟も同じように、ピアノと中学受験の勉強を強要されていましたが、今思えば、弟はめったに叩かれたり罵倒されたりしていませんでした。
弟は私と違ってひどい目に合わない
という思いが、いつしか私と弟の間に深い溝を作りました。
理由②:反抗的な私と従順な弟
私は毒母にボコボコにされる毎日でしたが、反骨精神だけはあったため、毎日ひたすら抵抗していました。
子供なので殴り返しはできませんでしが、暴言を吐かれれば暴言を吐き返し、近所中に響き渡るような大喧嘩を繰り返していました。
今思えば、殴られたら殴り返せばよかったと思いますが、「学校を辞めさせるぞ」、「お前の物は親の買ったものだから全部捨てるぞ」、と脅される毎日だったため、立場が低すぎてそれ以上の抵抗ができませんでした。
一方で、弟は私が叩かれたり殴られたり暴言を吐かれていたのを、幼い頃からすぐ近くで見ていました。
逆らうととんでもない目に合う
と学習した弟は、親から姉をかばうことは一度もなく、じっと大人しく一切逆らうことのない人間に成長しました。
冷蔵庫の中身を勝手に食べてバチボコに怒られている姉を見て、弟はジュースひとつ飲むのにも、いちいち親の許可を取るようになりました。
親からああしろこうしろと言われたらその通りにし、決して余計なことをしない。親に反抗してばかりの私と真逆の人間に育ちました。
今思うと、上の兄弟がボコボコにされている恐怖から、自分の身を守るためにそうなったのだとわかります。
しかし、毒親の支配に必死に抵抗している私にとって、どんな目に合っていても横で無表情、もしくは(また逆らってる)といった目で薄ら笑いをしている弟は、もはや味方ではなくなっていきました。
理由③:毒弟からの暴力(DV)
最初のうちは、私と弟は仲の良い兄弟でした。
私は弟をとても可愛いと思っており、弟もまた、私に懐いてくれていました。
しかし、毒親支配によって、私もですが弟の精神状態はどんどんおかしくなっていきました。
弟はだんだんと甘え方がおかしくなり、中学生になっても一緒にお風呂に入りたがるようになったり、私と一緒のベッドで寝たがったりするようになりました。着替えを覗かれることもありました。
今では、弟の精神状態も限界にきていて、誰かにすがりたかった、心の拠り所が欲しかったのだとわかります。
しかし当時は私にそれを受け止める余裕はなく、異性なのに気持ち悪いと思うようになりました。
私が大学生で、弟が高校生のころ、2人で近くのイオンに出かけると、たまたまバイトの塾の生徒と会いました。
生徒は、兄弟にしては距離の近すぎる私たちを見て、「それ先生の彼氏?」とにやにやしながら聞いてきました。私はもう限界だと思いました。
そしてついに、
「あまりベタベタするのはやめてほしい」
と突き放すようなことを言ってしまいました。
すると、弟はタガが外れたかのように、今まで大人しかった態度は裏返り、暴力をふるうようになりました。
母親からは絶対的な恐怖支配をされていたので、暴力をふるうのは私と父親にのみでした。
私は暴力のたびに抵抗し、取っ組み合いの末、弟の眼鏡を何本も折りました。
それを、毒親達は止めませんでした。責められるのは、暴力を振るわれた側の私でした。
暴力をふるわれる娘のことはどうでもよく、眼鏡を新しく買うお金のことばかり気にしていました。笑い話にしかなりません。
毒父が腕を折ったこともありました。
この暴力が決め手となり、これ以上関わることはできないと悟りました。
毒兄弟のその後
毒親に従順だった弟は、意思というものをほとんど削がれて大人になってしまいました。
高校までは受動的に過ごしていてもなんとかなりますが、大学は自分で講義を選び、さぼっても単位が取れなくても、怒られるわけでもありません。
親の言うままに入った大学はいつの間にか行かなくなり、そのまま引きこもってしまいました。今はもうどうなっているかわかりません。
なにかできることはあったのではと思う時もありますが、支配への抵抗で必死だったあの頃、そんな余裕は私にはありませんでした。
毒親の脅威にともに戦ってくれる人がいたら、どんなに心強かったのにと思うこともあります。
兄弟で毒親に立ち向かっている人のエッセイ等を読むと、いいなぁと思うこともあります。
でも、私にとって、家族まるごと毒になってしまいました。
それでも、毒家族とまるごと縁を切っても、私は生きています。
毒家族に支配され、毎日怒りと悲しみと虚しさで頭の中が真っ赤になっていた頃と比べ、びっくるするような平穏な毎日を過ごせています。
たとえ罪悪感があっても、近くにいる限り、毒の汚染は止まりません。離れることが一番です。
例え血を分けた兄弟であっても、毒親のせいでおかしくなってしまったとしても、それでも、一緒にいるべきではない相手だと、私は思っています。
全然ハッピーエンドではありませんが、兄弟に悩む方にとって、少しでも役に立てば嬉しいです。
以上、お読みいただきありがとうございました!