- タイトル:『虐待父がようやく死んだ』
- 著者:あらいぴろよ
- 発行日:2019年8月
この本の毒親傾向
- 作者(あらいぴろよさん)
- 毒父:暴力・アルコール依存症DV。外面は良い。
- 毒母:夫のDV被害者。一見子供たちを大切に思っているが、離婚はしない。
- お兄さん2人:作者と同様毒親の恐怖にさらされる。
毒母・毒父のタイプ(特徴)についてはこちらで紹介しています↓
簡単なあらすじ
外面がよく評判のいい父親、しかし家のなかでは酒乱で妻や子供に暴力をふるうDV親です。
物語の中盤までは、この毒父の暴虐(暴力・性的虐待・面前DV・人格否定)について描かれています。
夫のDVに耐え、ぼろぼろになっても、身を挺して子供たちを守る。
主人公は、「みんなのために頑張ってるのに!」と包丁を振り回し怒り狂う母を見て、(お母さんは被害者、悪いのは全部父親)と思うようになります。
物語の後半は、DV父が死に、影に隠れていた母親の毒が露呈していきます。
ずっとお母さんは被害者だと思ってきたけど、実は母親もおかしいのでは…?DV夫婦の共依存なのでは…?という展開に変わっていきます。
親と離れてからも、主人公は人間関係でつまずき、男女関係でも歪んでしまい、フラッシュバックに苛まれます。
ところが、結婚、出産してめでたしめでたし、とはいきません。
出産後も、子供との関わりを通して、多くのフラッシュバックを経験しながら、自分の生き方を見つめ直していきます。
この本の感想・レビュー
①毒親の配偶者もまた、毒親だということ
最初は「被害者」としてけなげに子供たちを守る母親として描かれており、子供たちも(お母さんを守らなきゃ)と思っています。
メインの毒親に隠れて、その配偶者の毒に気づかないことは非常によくあることで、その気づきの過程がとてもリアルです。
主人公は大人になり、父親が病気になると、ようやく母親のおかしさのおかしさに気づくようになります。
お母さんは子供のせいで逃げられなかったんじゃなくて、ただ私たち子供より父親を愛していたから、あんなひどい環境で私たちを育てたんだ。
私が父親から性的な目で見られていたことに、お母さんは気づいていた。気づいてなお、娘に嫉妬していた。
と気づいてしまう部分は本当に生々しかったです。
②「親を殺したい」と思ってしまう子供の心
後半で父親が死ぬ展開になりますが、
「もっとホッとすると思ったのに。」
「火葬の点火スイッチを押したい。本当は私が殺したかったのに。」
という感情、よくぞ描いてくれたな、と思いました。
毒親育ちの後遺症は、単に距離をとったり、絶縁したり、結婚したとしても、そう簡単には消えません。
また、親が死んだところで、「色々あったけど産んでくれてありがとう…」となるはずもなく、いっそ殺したかったと思う気持ちはとても真に迫っていました。
③親と離れても、周囲との違いに苦しみ、人間関係をこじらせてしまうところ
主人公は、毒親のことをわかってくれる友人にも出会えますが、初めて受け入れてもらえた喜びから、何カ月も自分の受けた悲劇を語ってしまい、「お前の精神状態はおかしい」と言われてしまいます。
ただ、トラブル続きの人間関係のなかで、主人公は、自分の考え方に原因があることに気づきます。
毒親の影響を受けている時は、自分は完全に悪くなかった。だから、どんな時も「私は悪くない」と自分を慰めてしまう癖がついてしまった。
④子供への虐待の連鎖は断ち切れるというところ
主人公はやがて子供を産み、男の子を育てていくのですが、子育てにおいて虐待のフラッシュバックが起こり、毒の連鎖から脱しようとする描写が凄まじく、心に迫るものがあります。
毒父が死んでもなおフラッシュバックに苦しむ主人公が、育児疲れで余裕がなくなり、息子(幼児)に対して
「私は絶対に虐待なんかしない、良い親にならなきゃ」
「こんなに愛してやってるのに泣きやがって、何が不満なんだ」
という葛藤、過去のフラッシュバック、私も同じように経験があります。
「私もこんな風に親に愛されてみたかったのに」という叫びは、心にぐさっと刺さるものがありました。
それでも、
暴力をふるったり性的対象として見たりしない、子供として見てくれる親は、私にはいなかった。
そんな風に、最終的に親の呪縛から脱出し、ケリをつけることができます。
⑤唯一の救い:分かり合える兄弟関係
兄弟とともに、虐待の後遺症(記憶障害やPTSD)に悩まされながらも、老いた毒父と毒母の対応をともに考え、ともに乗り越えていく姿は、読んでいて素直にうらやましいなと思いました。
私の兄弟は毒親に迎合するタイプで、最終的に暴力をふるうようになってしまったので、私は親との絶縁ついでに兄弟からも逃げてしまいました。
でも、もしかしたらこんな未来もあったのかもな…と少し思ってしまいました。
まとめ
きっと、こんなにもデリケートな心のうちをさらけ出すのに勇気も必要だったでしょうし、描く過程で辛くなかったわけがないと思うんですよね。
この本は、読んだ毒親育ちのみなさんが、毒親に抱いた感情は間違ってなかったんだと、 いつか幸せな家庭を築くことが出来るんだ、と思うことができる作品だと思います。
世の中にはこんな日常が実際に存在ということを、その傷を深く負ったまま今も苦しんでる人がいることをぜひ知ってほしいです。
アマゾンの高評価も頷ける作品です!
ちなみに、夫にもこの本を読んでもらい、タイプは違うけれどうちの毒親もこれくらい酷かったよと伝えると、私から言葉で聞くよりもかなりリアルに感じ取れたようで、「大変だったね・・・(超神妙)」と理解してくれました(笑)
この記事を読んで少しでも気になったのなら、ぜひ読んでみてください!
毒親育ちエッセイは最近色々と出ていますが、私はこれが一番、毒親育ちにとって助けになる一冊だと思います。
以上、お読みいただきありがとうございました!