私にとっての「毒親」は、母親でした。
暴言、暴力をデフォルトとし、習い事や受験勉強で教育虐待し、受験に失敗すると存在を無視し、私をボロボロにしたのは確かに母親でした。
一方の父親は、そんな強烈な妻の言うがままに動き、逆らわず、大人しく、感情の乏しい人でした。
そんな父親を、私はかなりの間、「毒母に従わされている可哀そうな被害者」だと思っていました。
しかし、だんだんと気づき始めました。
なんでこの人、娘が母親にこんなに酷い言葉をかけられているのに、横でテレビ見てるの?
気づく前:父親はこんな人だった
私の父親は、おだやかな人でした。
めったに怒ることはなく、柔和のように見え、仕事も定時で帰ってきて、家事も手伝っていました。
特に趣味はなく、好きなものも大してなく、子供に自分から関わることもなく、いつも仕事から帰るとテレビを見ている、そんな無害な人でした。
父親も被害者だと思っていた
私の母親は強烈なヒステリーを持っていて、毎回違う場所に埋まっている地雷を踏むとカッとなって手が付けられなくなり、叫び、当たり散らし、暴言を吐きまくる人でした。
パワハラ上司ですね。
そんな妻に対し、私の父親はただただ従順な態度でした。困った顔はしても、反論することはほとんどありませんでした。
たまー…によかれと思って子育てや家事に口を出しても、「余計なことをするな」「中途半端なことをするな」と言われ、口を閉じさせられる。
そんな父親を、私は自分と同じ被害者だと思っていました。
父親が子育てにノータッチでも違和感がもてなかった
私が中学受験模試でA判定を取れず、母親に「お前なんて屑、産まなきゃ良かった、親の金をドブに捨てている」など暴言を吐かれたとき、
横で聞いていないフリをしてテレビを見ていました。
ケンカしてヒートアップして毒母のヒステリーが頂点に達し、娘の首を絞め、娘の部屋の物を全部捨て、
さすがに殺されると思い、父親の会社へ電話をかけ、急いで戻ってきてもらい、さすがに味方してくれるかな?と思ったときも、
「お前がかあさんに何かしたのか」と言ったきり、見て見ぬふりをされました。
でも、当時の私は、「母親が全部悪い」と思っていました。そのくらい、父親という存在は影に隠れていました。
未成年のころはとにかく毒母と戦うことに必死で、父親の存在はほとんど関知していませんでした。
気づき:毒だと気づいた最大のきっかけ
成人になり、アルバイトもできるようになり、家にいる時間をかなり減らせるようになりました。
親との距離を少しずつとれるようになると、親のおかしさを客観的に見られるようになってきました。
そしてとうとう、父親もヤバいと思う最大のきっかけがやってきました。
20歳も過ぎたころ、母親は子宮系の病気を患い、毎日苦しむようになりました。
関わっていないのでよくわかりませんが、手術したあとも、予後が良くなかったようです。
ある夜、2階の自分の部屋にいると、「ヴェェ…」と1階のトイレからものすごいうめき声が聞こえてきました。
ただ事ではないと思い見に行くと、便器に顔を突っ込んでぐったりしている母親が。
険悪な仲とはいえ、さすがに人として心配になり、「どうしたの?」「救急車呼ぼうか?」と色々声をかけましたが、意地になって首をふるばかり。
どうしたものかと1階のリビングに行くと、テレビでお笑いを見て笑っている父親が。
私「え…なにしてんの?」
父「…?」
私「母親、トイレで吐いてるんだけど?あれヤバくない?救急車は?」
父「呼んでない」
私「え、な、なんで?」
父「あいつが呼ぶなっていうから」
私「…は?(絶句)」
父「…?」
本当に、何でいけないのかわからない、という反応でした。
この反応に私は戦慄しました。
この人は被害者じゃない。この人がこんなだから、母親はあんなにエスカレートしてしまったんだ。
さすがにこの時は、父親もバツが悪かったのか、一度トイレに様子を見に行きましたが、母親に「ほっといて」と言われた父親はすごすごと戻ってきて、またお笑いを見ていました。
結論:父親は実は「受動的アスペルガー」だった
診断はしていませんが、ほぼ間違いなく、父親は「受動的アスペルガー」でした。
※アスペルガーにはいくつかの種類があります。
受動的ASD(アスペルガー)タイプの毒父とは、
一見優しく穏やかで、
ヒステリーな妻の言うこともはいはいと聞き、
まわりから見ると「子供にも妻にも優しい良い夫」に見える。
そんな父親です。
しかし、受動的アスペルガーの父親は、こんな特性を持っていました。
・人と関わることは受け入れるが、自分から人に関わりにいかない。
・積極性はないが、誘われれば素直に従う。
・集団に入ると流されやすく、自分の気持ちが言えない。
・命令されると、良くない要求も受け入れてしまう。
・他人の気持ちがわからないため、大事な場面でずれた発言をしてしまう
「受動的ASDタイプ」についてもっと詳しく知りたい方は、下の毒父タイプ別もぜひ見てください。
この特性をもつ男性は、「ジャイアン毒母」ととても相性がよく、もれなくこのタイプだった私の母親とは、毒の相乗効果をもたらしていました。最悪です。
まとめ
母親はぶっ壊れていても、父親とはいつか分かり合える。そんな甘いことを思っていた時期もありました。
でも、毒は毒と掛け合わされて猛毒になる。
どちらかが毒に罹患しかかっていても、パートナーが正常なら、引き戻せる可能性だってあります。
縁を切られるまで子供を追い詰めた両親の、どちらかが正常なわけがあるでしょうか。
私は父親に、「母親に精神科を受診させたらどうか」と提案したことがあります。
「ヒステリーが極限に来ると何をしゃべっているかもわからなくなる人」は、どう考えたって異常です。
でも父親は言いました。「お前は母親を精神病患者にさせるのか。」
この一言で、私は「父親とも縁を切ろう」とはっきり決めました。
メインの毒親に隠れて、もう片方の親の毒に気づかないということは、よくあることです。
あなたの毒親は、どうでしょうか。一度考えてみると、違った見方ができるかもしれません。